【Part2:街路樹都市ブランディング】街路樹の豊かさを甘受できていない日本の都市環境
(続編)さて、この雑多が普通になってしまっている景観をどう活性化させ、調理しったらよいのかを考えてみたいと思います。(下記は五反田の旧ソニー通り)
まずは海外の事例を見てみましょう。下記は上海の衝山路近辺です。ご存知の通り、上海はプラタナスの街路樹が特に有名で、空を覆う街路樹の葉の美しさや爽やかさに目を奪われます。上海は街路樹天国なのです。
これも上海の裏通り。先ほどの五反田ソニー通りとの大きな違いを一目で理解して頂けるかと思います。
因みに下記は私が若い頃暮らしていたカナダトロント市の自宅前の通り。(Madison Avenue) ここは住宅街です。トロントは真夏は東京と似た気候になりますが、通りを覆い尽くす街路樹のお蔭で、夏でも涼しく爽やかです。
もう一度言います。このレベルで普通の都市近郊の住宅街です。大木が多いのも特徴で、葉が家の敷地内に落っこちても、誰も文句も言いません。日本の街路樹や街並みに対する認識の希薄さが浮き彫りになるような写真です。
日本と一番違う点は、幹線道路のみではなく、住宅街地区まで街路樹があるという点です。言ってみれば、大田区田園調布のような銀杏並木が、普通の住宅街の通り、なのです。日本の住宅街は、道が細く狭いのと、道路と家がくっついている構造なので、歩道や欧米で言うグリーンベルト(住宅街の歩道に芝生が連なっている)や街路樹は存在しません。また木賃住宅の家々がまだまだ多く、密集しすぎている割には空間が活かされてなく、区画整理も進んでいません。これは我々の認識度を上げなければならない課題でもあるかと思います。
そう、東京の緑化は、繁華街や一部の地域だけではなく、ごく普通の住宅地の緑化が重要課題だと思います。その状況下においても、東京なりに工夫することは可能でしょう。例えば、無機質なブロック塀を止め、緑化された壁を推進。住宅街の中の看板などを規制するだけでも美しくなります。また、東京都が個人の植林を奨励し、植えたい所を指定すれば市が無料で樹を提供し、樹の育て方も教えてくれる、などの工夫があってもよいかもしれません。また、常緑樹ではなく、四季折々に風情が味わえるかえで、ポプラ、白樺など、道によって色々な樹が植えられてもよいと思います。緑が美しい季節に、街中の散歩が楽しめそうです。
また東京だけではなく、日本全体の街路樹に言えることですが、葉っぱが可哀想なほど伐採されてしまい、夏になっても並木が木陰となり、涼しくなるというメリットが得られない場合が多い。まるで刈りすぎてしまったスポーツ刈りのようです。以前伐採をしている役所の方に質問をしたことがあるのですが、直接枝が落ちる、葉っぱが邪魔という苦情が絶えない…のような理由からのようでした。
しかし、欧州、北米やアジア(上海、ベトナム、シンガポール、タイなど)では、
道一杯に木々の葉っぱが広がっています。まるで緑の屋根。木々の緑と街並みが調和する姿は、本当に素晴らしいものがあります。例えば表参道(真ん中の写真)だって、もしケヤキ並木が存在してなかったら、今のような発展には至らなかったのではないでしょうか。
街路樹には、以下のような利点を提供してくれます。
●街並みが美しくなる。(四季の素晴らしさを感じ、風情が生まれる)
●街並みが文化的(芸術的)になる。
●排気ガスを吸収してくれる。
●木のおかげで歩行者を車の事故などから守る。
●二酸化炭素の削減に寄与。
●夏には日差し除けの効果を果たすため、日射病・熱射病に対して効果的。
●人が集まる。(商売にもプラス)
●ただでさえ緑が少ない都市に、自然や四季を感じられるようになる。
●治安が良くなる。(街に潤いが生まれ、カフェなどの店舗が増えるのも一因)
●ブランド価値が上がり、土地の評価額が上昇する。(→これ大切です!)
●住みたくなる街になる。などなど。。。
ここで都内でもちょっと参考になる通りを紹介したいとおもいます。下記は八重洲のさくら通りです。都内ではめずらしい「覆い尽くす型」の街路樹です。エリアは雑多でも、この桜の街路樹がそれらをカバーしているという、独特な種のある通りです。
下記は自由が丘。こちらも桜です。これは早朝ですが、昼間は街路樹の下に沢山の人々が集っています。これこそが街ブランディングが求める所だと思います。
こちらは白金台にある東大医科研内。このレベルが住宅街であれば、日本も重厚で素晴らしい文化国になるのになあ。。。
最後に我が五反田のリベンジを。山あり谷ありの五反田は雑多なエリアが有名になっていますが、上場企業の企業や美味しい飲食店も多く、池田山・島津山・高層タワーマンション街地区などの高級住宅街ゾーンもあるんですよ。下記は最近再開発された旧ソニー地区。高輪に繋がる道ですが、ここも五反田です。緑と落ち着いたブラウンを意識した新しい住宅エリアです。(香港やマカオの高級住宅街っぽいですね。)
今後の視点としては、電信柱と色彩が整っていない汚い街並み、住宅密集地ばかりの東京に、街路樹を大きな幹線道路だけでなく、いかに住宅街(住宅地域)に も拡げていくか、という点も大切だと思います。電信柱が地中に潜り、かわりに電信柱が街路樹になったら素晴らしいでしょうね。そういう意識を育てていく機会の創出も大切かと思います。
緑に覆われた、素晴ら しい文化都市、東京になることを心から願っています。